私は働くことが好きだ。私の人生には必要なことだと思う。
一つの目的に向かって、チームで進んでいく感覚や、ミッションをやり遂げた瞬間。お客さんとわかりあえた時間とか、お給料をもらったときの安心感。
働くことで感じるよろこびは、数えきれない。
でもどうして、苦しくなるんだろう。
それは、がんばりすぎてうまく休めない私がいるからだと思う。
「ワークライフバランスを大切に」と言われ始めたのは、もうひと昔前。
「好きを仕事にしよう」と言われる今だからこそ、自分が無理なく働けるキャパシティを知っておきたいと思う。
私はいま、正社員の仕事をしながら、副業ライターや飲食店のアルバイトをしている。
全部、好きな仕事。好きなことだけをする生活に憧れていたし、自分で選んだ仕事をしているんだから、弱音は吐けないと思っていた。自分なりに、自分を大切にしてあげたくて、やりたいと思うことは全部やってみたかった。
あるとき、ありがたいことにライター業の繁忙期がやってきた。
「1日7時間のフルタイム勤務をしながら、原稿を週3本あげる」
そんな数週間が続いた。クライアントが増えた時期でもあり、経験したことのない忙しさだった。
自分を必要としてもらっているなんて、ありがたいことなんだから乗り越えなきゃ。そう自分に言い聞かせた。
体力には自信のある私。でも、そんな毎日のなか、はたと気づいた。
「私はいま、人間らしい生活してる?」
周りを見渡すと、部屋は散らかり、洗濯物は山積み。食事は時間をかけずにかきこんで、原稿に向かう。お風呂に入るのは、朝方。少し眠って、会社に向かう。
そんな、ほんの数週間。社会人ならば、多くの人が経験する忙しさなのかもしれない。
実際、以前勤めていた会社では、毎日のように遅くまで残業をして、朝早く出社するような働き方もしていた。
それが嫌で辞めたはずなのに。私はまた、繰り返していた。
つまり、どんな会社で働いていても、フリーランスだとしても、私が私に「ちょっと休もうよ」「それが望んでいる生活?」と声をかけてあげないと終わらないということだ。
激動の数週間をすごした私は、それからむやみやたらに仕事を増やすことを辞めた。パタリと電池が切れたように、だらだら、ゴロゴロするだけの時間の贅沢さを味わうようになった。自分のためにお茶を淹れたり、食事をつくったりする時間があるのも嬉しかった。
そうだ、私はこういう時間も好きだったんだ。心の奥が「やっとこっちを向いてくれた!?」と尻尾を振って喜んでいた。
私は、働くことが好きだ。でも、働くために休むわけじゃない。働くために、生きてるわけでもない。ひとりの人間として、たくさんのことを経験して、色んな感情を味わいたい。できれば誰かとつながりたい。
私にとってその手段のひとつが、“働くこと”なだけなのだ。
働くことと同じくらい、だらだら昼まで眠ったり、家事をサボったり、休憩を多めにとったりする私も、ジャンクフードやスイーツが好きな私も、友達とくだらないことで笑い合う私も、大事にしよう。
自分の身体や心が求めることに耳を澄まし、正直に行動してあげよう。
人間をサボることは、やっぱりしたくないから。